現代の人々は人付き合いや仕事によるストレスを抱えて生きています。そんな人にとってペットとは至上の癒しであり、自分にとっての居場所でしょう。しかし、ペットへの愛情が死別によって悲しみへと反転し、結果としてペットロス症候群を発症する人もまた急増しています。そんなペットロス症候群に苦しむ人を救う職業こそがカウンセラーです。
日本ではまだまだカウンセラーと聞くと怪しい詐欺集団だと思われがちな面もありますが、正規のカウンセラーは心に傷を負った飼い主様にとって非常に心強い味方となってくれます。
今回はペットロス症候群の解説や、カウンセラーについて解説していきます。
目次
ペットロス症候群とは
ペットロス症候群、名前だけはそれなりに有名になったものの、実はよく知らないという方は多いのではないでしょうか?まだまだ日本ではしっかりと認知されていないのは事実ですが、実際に苦しんでいる人がいる以上、しっかりと知識を深めていかなければいけません。
ここではペットロス症候群について解説します。
ペットロス症候群の定義
ペットロス症候群とはその名の通りの意味で、ペットをロス(失う)ことで生まれる喪失感からなる精神疾患です。日本ではまだまだメジャーとは言えませんが、欧米では1984年には既に学術論文が発表されているほど有名です。日本においてはペットロス症候群として認められるかどうかは診た人によりますが、下記の3つを主に重点的に見て判断されています。
・長期間(主に6ヶ月以上)もの間、強い症状が出ている
・悲しみなどのマイナス感情が、発症による身体的苦痛よりも激しい
・日常生活に支障をきたすレベルである
ペットロス症候群の症状は人の精神に影響している疾患なため、どれくらいの期間で治るのかも個々によって大きく異なります。1ヶ月と経たない短期間で現実を受け入れて心の整理ができている人もいれば、1年経っても症状に苦しんでいる人もいます。
ペットロス症候群は精神疾患であるためか「自分が弱いからだ」と更に心を追い詰めてしまうこともありますが、先述したように海外では比較的認知されているものです。決して自分だけがおかしいとは思わず、落ち着いてゆっくりと受け入れていきましょう。
ペットロス症候群の主な症状
ペットロス症候群による症状として【うつ病】【不眠】【情緒が不安定になる】【悲しみなどの感情が急に強くなる】【無気力】【拒食症または過食症】【心身症】【錯覚、幻覚、妄想】が挙げられます。また、自分自身への無力感からか、攻撃性が増してしまうこともあるようです。
ペットロス症候群はあくまで長期に渡って生活に支障が出るレベルで症状が出ている状態を指します。軽度、または短期間による症状はあくまでペットを失うことに対する精神の防衛反応としては正常な反応だとされています。
ペットロス症候群になりやすい条件
現代は少子高齢化や一人暮らしの人が増えたことでペットへの愛情が深くなりやすく、生活上の伴侶※1として扱う人が増えています。しかし、ペットとして飼われている動物の多くは十数年で寿命を迎えてしまうため、ほとんどは飼い主よりも早く亡くなることでしょう。
飼い主になったことで【深く愛したペットの死を見送る】ことを経験してしまう人が多くなったことで、日本でもペットロス症候群が広く認知されてきました。つまり、ペットロス症候群は【ペットへの愛情の深さ】によって発症する疾患です。ある意味、現代だからこそここまで症状に苦しむ人が現れたと言えるのでしょうね。
また、死別といってもその全てが寿命を全うしたとは限りません。事故死や病気による突然死によって別れてしまった人も少なくないでしょう。そういった場合もペットロス症候群を発症しやすいです。
※1 伴侶動物またはコンパニオンアニマルとも呼称されています。
ペットロスのカウンセリングとは
ペットロス症候群はれっきとした精神疾患であり、一人で治せない場合はカウンセリングを受ける必要があります。しかし、中にはカウンセリングに対する不信感や「本当に治療できるのか」と疑う人も少なくありません。お金をかける以上、カウンセリングとはどういったものなのかを知っておきましょう。
ここではペットロスになった時に通うことになるであろうカウンセリングについて解説します。
友人とカウンセラーの違い
カウンセリングは基本的に依頼者の悩みを聞いて、一緒に解決していくものです。それだけを聞くと「それなら気の合う友人に相談した方が効果ありそう」と思うかもしれませんが、ただの一般人とカウンセラーには明確な違いがあります。それは【カウンセラーは臨床心理学を用いる】という点です。
臨床心理学は主に心身症や精神疾患、心理的な問題に対する援助や回復、または予防を目的にした心理学の一つ。つまり、カウンセラーはそういった心の苦しみを解消するためだけに長年勉強、実践してきたプロ集団です。学校の授業を教師が行うように、怪我を医者が治すように、精神的な問題を解決するためにこれほど心強い人たちはいません。
ただし、あくまで話をする中で問題を解決する仕事ゆえかカウンセラーを詐称する悪質な詐欺も横行しています。本来カウンセリングとはいくつもの養成課程をクリアし、その中で培われてきた知識や技術を用いるもの。カウンセリングを利用する際は有名な場所を選ぶ、公認心理師や臨床心理士、日本学術会議がしている学術研究団が認定している資格を保有しているカウンセラーを選ぶことで詐欺集団を回避できます。
カウンセリングの内容
カウンセリングと聞くとなんだか難しそうですが、依頼者はただカウンセラーに悩みを正直に伝えるだけでOKです。カウンセラーはその悩みを聞いて依頼者の心の傷を治すために話し合いや、場合によっては病院と協力して薬を処方することがあります。ただし、基本的には悩みに対する明確な答えをすぐに提示することはありません。そのためカウンセリングはほとんどの場合長期にわたって行われます。
これはなにもカウンセリングを引き伸ばすためではなく、依頼者の心の闇を見せつけてしまう仕事のため、依頼者の負担を考慮するとどうしても時間が必要なのです。カウンセリングを受ける人の中には「カウンセラーを替えたい」と言う人も少なくありませんが、これはあまりおすすめできません。
というのも、カウンセリングは先述したように依頼者の傷を抉りかねないものではありますが、同時にそうしなければ問題が解消することはありません。もしカウンセラーを替えてしまうとまた依頼者は辛い思いをしなければいけませんし、なにより自分の心の悩みがいつまで経っても解決できません。最悪の場合、「ここは自分のことを分かっていない」というような思考回路になってしまい、そうなればペットロス症候群を治すことが非常に困難になります。
カウンセリングは辛いものですが、どうかカウンセラーを信じてあげてください。どうしても駄目だった場合は他のカウンセラーを頼るときに、前のカウンセリングのことを話しましょう。
ペットロスになった時に自分でできるメンタルケア
心の病はどうしても周りの協力やプロによるカウンセリングを必要とする場合がありますが、一方で自分でメンタルを安定させていくことも重要です。辛い時はちゃんと周りに甘えつつ、症状が落ち着いている時は自分ができることをやっていきましょう。
ここでは自分でできるメンタルケアを解説します。
自分の感情を素直に表現する
精神的に不安定な人に多いのは【自分の気持ちを受け入れられない】というケースです。自分の中の弱さや汚れを認められず、自分で自分を追い込んでしまうのですね。増して社会人や主婦など自分以外の何かために頑張らないといけない人たちは「こんなことで周りに迷惑をかけられない」と自分を押し殺して無理をしてしまいがち。
大切なのは自分を客観視したときにどう見えるのかを意識することです。おすすめなのは自分の悩みや嫌なことを紙に書くこと、実際に目に見えることで事実を客観視しやすいですし、紙に書き出すことそのものが落ち着くことに繋がることもあります。
また自分ひとりで悩まないことも大切です。友人や家族、カウンセラーなど自分が信頼できる相手に相談してみましょう。面と向かって話したくない内容ならば電話相談という手もあります。とにかく一人でなんとかしようとしないことがコツです。
趣味に没頭する
突然ですが、皆様は趣味を持っていますでしょうか?私はよく散歩をして色々なところの景色を見るのが好きです。なぜこんな事を言うのかというと、趣味に没頭することはメンタルケアに最適だから。アニメや音楽、ゲームでもなんでも構いません。時間を忘れてただ無心で楽しめるもので気分転換をしましょう。
ただ、その中でもどうしてもおすすめを挙げるとしたら散歩がおすすめです。天気の良い日に外を散歩して景色を眺めると良い気持ちになりますし、日中に歩くことでセロトニンと呼ばれる精神を安定させる神経伝達物質が分泌されます。さらに体内時計がリセットされるので、夜の寝付きも改善されるため、不眠で悩まされている場合にも効果的です。
毎日の生活だけは健康的に
心の不安定さはそのまま日常生活に影響が出てしまい、結果として不健全な生活をしてしまいがち。そして不健全な生活は心をより一層傷つけてしまいます。つまり、完全に悪循環に陥ってしまうのです。無理に平常心を装う必要はありませんが、自分ができる範囲で健康的な生活を心がけましょう。
また処方箋を頼る場合はなるべく短期間に留めてください。薬に慣れてしまうと、それありきの生活になってしまいます。怪我や風邪と違って薬のみで完治するものではないのが精神疾患です。あくまで緊急時に使用するものだと考えましょう。
有給の取得について
ペットロス症候群の症状で苦しんでいる場合は思い切って有給をとって気分転換に徹するのも手です。「そんなことで有給を使ってもいいの?」と思われる方もいますが、基本的に有給を使用するのに特別な理由はいりません。「ペットが亡くなって辛いので有給使います」とわざわざ理由を話さずとも、「私事都合によりおやすみをいただきます」だけで結構です。
心身ともに無視できない不調があるなかで無理に仕事をすることは、却って仕事のミスを招いたり周りに心配をさせてしまいます。ゆっくり休んだらまた仕事を頑張る、それぐらいの認識で大丈夫です。
ペットロス症候群は立派な疾患
ペットを飼っていない人の中には「ペットが死んだくらいで大げさだ」と心無い言葉を投げかける人もいますが、ペットロス症候群は決して個人の弱さや甘えではありません。海外でもメジャーですし、日本でも確実に疾患という認識が広がっています。それだけ世界にはペットを愛した人や、だからこそ苦しんでいる人がいるのです。
自分だけが悪いのだと思わず、カウンセラーや信頼できる人に頼りましょう。