かわいそうだけでは済まされない野良猫問題と対策

野良猫……もともとは「飼い主がいない、のらりくらりと生きている猫」という意味だと言われています。しかし、これは決して野生の猫という意味ではありません。今外の過酷な世界で生きている野良猫達は、元を辿れば人間が身勝手な理由で捨てた猫やその子孫達なのです。

しかし、だからといって「かわいそうだから」とむやみやたらにエサを与えたり、不妊手術を怠っていると、様々な問題が起きてしまいます。人間のエゴで生み出され、そして人間社会で被害を頻発させている野良猫達。私達は一体彼らにどのように接していけばいいのでしょうか?

今回は野良猫を取り巻く現状と、野良猫の対策・保護の方法について解説していきます。

目次

1野良猫がなぜ危険なのか?

冒頭でお話したように、野良猫は人の身勝手な理由によって生み出された悲しい存在です。しかし、ここまで繁殖してしまった今、ただかわいそうだからと放置できない所にまで来てしまいました。

ここでは野良猫はなぜ危険なのか、その被害について解説します。

1.1繁殖力がかなり高い

野良猫の最も厄介な点はその繁殖能力の高さにあります。生殖行為が可能となる性成熟が早く、妊娠率もほぼ100%。加えて、日照時間の長さで繁殖期をコントロールしているため、常時照明が点灯している都会ではほぼ一年中繁殖行為を行う可能性が高いです。

誰かによって捨てられた野良猫が子供を産み、その子供が僅か数カ月でまた子供を産めるようになる……しかも都会では年中繁殖期を迎えているとなれば、その繁殖能力は疑いようがないでしょう。妊娠できるメス猫が1匹と、発情期を迎えたオス猫が1匹もいれば、産まれた子猫同士で近親相姦を行うため、一気に数が増えていきます。

猫を飼ったらまず避妊手術が推奨されるのは、この繁殖能力の高さゆえ。望まない妊娠を避けるためなのです。因みに、犬も性成熟は猫と同じぐらいですが、妊娠率は猫ほど高くありません。

1.2野良猫を放置するとどうなる?

野良猫は避妊手術や地域猫活動無しでは、一気に数を増してしまい、様々な問題が発生してしまいます。感染症や交通事故、ペットとの喧嘩、生ゴミ漁りなど、身近で起こり得るものだけでもこれだけ考えられます。更に少し視点を変えると、野良猫の放置はより大きな問題を引き起こすのです。

今年の6月、三重県で高齢者夫婦が野良猫を不適切飼育していた事が明らかになりました。夫婦は避妊手術をしていない野良猫に餌を与え、野良猫もどんどん子供を産んでいたのです。当然、糞尿等の被害も深刻ではありましたが、何より驚くべきなのは子猫目当てにアライグマまでやって来たこと。

アライグマといえば、害獣であると同時に特定外来生物にも指定されています。三重県で起こったこの出来事は、結局のところ特に大事にまで発展することはありませんでしたが、不適切飼育が続いていれば、外来種問題にもなっていたかもしれません。

1.3野良猫対策はかわいそう?

日本では深刻化した野良猫問題を解決するために、地域猫活動として避妊手術をするなど野良猫を減らすために様々な対策をしています。野良猫の被害を抑えるための活動ですが、一方で「勝手に手術してかわいそうだ」など批判的な声も少なくありません。しかし、本当に野良猫対策は猫にとってかわいそうだと断言できるのでしょうか?

野良猫は基本的に短命で、3年足らずで亡くなる事も多いです。硬い地面に寝転び、ゴミを漁り、感染症にもかかっている。そんな猫が長生きできるはずもありません。最終的には、猫同士の喧嘩で感染症が広まり、死んでいくとのこと。過酷な環境の中、必死に産んだ小さくか弱い命は動物達のエサとなり、運良く生き延びたとしても長くは生きられない。放置された野良猫には、そんな未来しか待っていないのです。

では今いる野良猫達を、繁殖対策もせずに保護できるのか?いいえ、現実問題、今いる野良猫達全てを幸せにする事は不可能でしょう。野良猫を減らす活動は、人々への被害だけではなく、猫達自身の悲しい未来を救う為の活動なのです。

2野良猫問題に対する対策とは

野良猫は愛護動物の対象であるため、原則として傷つける、又は殺す為の行為・捕獲は一切禁じられています。しかし、だからといって放置もできません。

ここでは野良猫問題に対する市の活動や自分で出来る敷地内侵入防止の方法について解説します。

2.1野良猫は愛護動物の対象

野良猫による被害は数多く報告されていますが、基本的に都道府県は手が出せません。なぜなら、野良猫は動物愛護法の対象に入っているため、殺したり傷つける事が禁じられています。更に、野良犬の場合は狂犬病予防法によって対応が義務付けられていますが、野良猫はそういった規則が無いため、都道府県が対応する義務も無いのです。もちろん、我々市民も野良猫が嫌いだからといって必要以上に傷つける事は許されていません。

では何も対策がないのかといえば、そうではなく、野良猫を減らす為の活動を行っています。それこそが度々話題に上げていた地域猫活動です。これはその地域に住んでいる人達が主体となって、野良猫に不妊手術を行う、決められた時間にエサを与えるなどをして野良猫を管理しようという活動。これにより、野良猫の数を減らしつつ、今生きている命を守る事ができるわけですね。

2.2野良猫を敷地内に侵入させないためには

野良猫を傷つける行為は禁じられていますが、たんに敷地内に侵入させないための対策であれば制限はありません。よく侵入対策として用いられているのは【臭いによる侵入防止】と【物理的に侵入できないようにする】方法ですね。順に解説していきます。

まず臭いによる侵入防止、これは忌避剤による刺激臭で猫を遠ざける方法です。ペットショップやホームセンターでも売られているため、手軽に入手できるのが強み。また、敷地を改造しなくても良い利点もあります。ただし、嗅覚を刺激するため個体によっては効果が薄く、時間経過や天候による影響で臭いが消えていくため、定期的な交換が必要です。また、トラブル防止のために予め近隣住民へ了承を得ておきましょう。

次に物理的な侵入の妨害。これは侵入経路に網を設置したり、トゲ付きの枝を地面に敷き詰めるといった方法です。また、景観を気にしないのであれば、猫が飛び越せないほど高い柵を設置するのも有効。他にも、やや高価になりますが、加圧式のスプリンクラーやブザーを置いておくと万が一侵入されたとしても、猫を傷つける事なく撃退できます。

3野良猫を保護する場合

野良猫は虐待の意志がない場合、つまり単純に愛護精神による保護が可能です。しかし、相手はブリーダーによって手懐けられた猫ではなく、厳しい環境で生きてきた野良猫。ちゃんとした対策としつけが必要です。

ここでは野良猫を保護したい場合に見てほしい点について紹介します。

3.1まずは動物病院へ

野良猫には感染症やノミ、ダニがついている可能性があるため、まずはじめに動物病院で診察を受けさせてあげましょう。健康状態によっては治療を行う必要もありますし、先住猫を飼っている場合は感染防止の為にも必要不可欠です。

ただし、来院する時は必ず事前に動物病院に連絡を入れましょう。院内には他の動物達もいるため、保護した猫が感染症にかかっている場合、集団感染してしまう恐れがあります。病院によってはそもそも野良猫の診察をお断りしている所もあるため、そういった意味でも事前に確認を取るに超したことはありません。

3.2迷い猫かどうかの確認

保護した猫が誰かの飼い猫だった場合、猫の状態がどうであれ、そのまま勝手に保護してしまうと窃盗罪になってしまいます。また、飼い猫でなくとも、地域で飼っている地域猫かもしれません。まずは本当に野良猫なのか、SNSや地域猫活動をしているボランティア団体、動物保護センターに確認を取りましょう。

また仮に飼い猫の痕跡があり、かつ虐待の恐れがある場合は動物愛護法に違反しています。その時は速やかに警察に連絡、もし確証が無いけど怪しいといった程度なら自治体に連絡するのもアリです。

3.3保護した猫との生活

先にすべき事を全部終えたら、いよいよ保護した猫との生活が待っています。ペットショップやブリーダーの元にいる猫は人に慣れるための訓練や、そうでなくとも普段から人と接しているため過剰に警戒することはありません。しかし、相手は過酷な環境に身を置いていた元野良猫、一筋縄では行かないでしょう。

保護した猫との生活はとにかく我慢と根気が要です。初めは警戒してご飯もまともに食べない、飼い主に近づこうとさえしないなんてことは珍しくありません。少しずつ、ゆっくりと時間をかけて警戒を解いていきましょう。

大切なのは、一度飼うと決めたならば最後までちゃんと責任を持って飼うこと。そして保護した猫がどれだけ幸せな猫生を謳歌できるかは、飼い主様にかかっているという自覚を持つことです。

4野良猫に襲い掛かる悲惨な結末

野良猫は人間の身勝手によって生み出された存在、本来は野良猫なんていない方が当たり前だったはず。元は飼い主によって飼われていた野良猫達は、外の世界に自分の居場所がありません。それでも必死に生きたとしても、僅か3年足らずで亡くなる事がほとんど。

そんな野良猫を1匹でも減らせるように、そして今いる野良猫が1匹でも幸せに生きられるように、自分達が出来る事を一つ一つやってみましょう。小さな命が助かるかどうか、それは貴方の手にかかっています。

天国への扉コラム