ペットと一緒のお墓に入る時に知っておきたい宗教や法律の知識

「自分が死んだら、ペットと同じお墓に入りたい…」そう思う飼い主様は決して少なくないはず。近年の【ペットは家族】という考え方からも分かるように、最近のペットはみんな飼い主様に大切に育てられています。例え死んでもずっと一緒にいたいと思えるくらい愛情を注がれたペットはきっと幸せなことでしょう。

一方で、宗教や歴史を重んじる人の中には「ペットと人間が同じお墓に入るなど許されない!」と否定的な方も多くいらっしゃいます。そうでなくとも、ペット=動物と人間が一緒に埋葬されることに違和感を持たれるかもしれません。

今回はそういった【ペットと人間が同じお墓に入ること】をテーマに、宗教や法律上の視点やお墓に入る方法について解説していきます。

今回の記事は【神道】【仏教(主に浄土宗)】【神仏習合】がテーマに深く関わっています。苦手な方はご注意下さい。また、特定の宗教を押し付ける意図は一切ありません。

目次

宗教や法律的な目線だと?

冒頭でお話したように、宗教や歴史を重視している人にとって【人と動物が同じお墓に入る】ということはあまり好ましく思いません。しかし、それにはちゃんとした理由があります。また、それ以外でも法律的にはOKなのか不安になる方もいるでしょう。

まずは宗教や法律的な目線から見ていきましょう。

日本で浸透している仏教的には好ましくない

日本は日本国憲法第20条にある【宗教の自由は、何人に対してもこれを保証する】とあるように、国教が定められていません。ですが、長く続く歴史の面から神道と仏教の教えが強く、その2つを合わせた神仏習合が実質的な基本となっています。例えば、お正月や節分なども元は仏教由来のものです。

さて、この仏教の教えの中には【六道輪廻】という言葉が出てきます。アニメや漫画などでも見かける言葉なので、「なんか聞いたことある!」となる人も多いでしょう。六道輪廻は【地獄道】【餓鬼道】【畜生道】【修羅道】【人間道】【天道】の6つの世界を生まれ変わりながら廻るというもの。この内、動物は【畜生道】にあたり、三悪趣に分類されます。

畜生道は最も過酷な世界とも呼ばれており、生前悪行をしでかした人間が転生すると言われています。つまり、仏教…少なくとも浄土宗から見れば動物というのは人間よりも格下に位置するのです。日本でも「犬畜生にも劣る」という罵倒がありますね。

仏教の教義上、人間と動物があの世で再会などできる訳もなく、人間とペットの骨を一緒に埋葬するなど許されるはずもないのです。その道を生きる僧侶がおいそれと飼い主様の意向に賛成できないのも無理はないでしょう。それこそ、忠犬ハチ公レベルであれば別なのでしょうが…。

一方で時代の流れからか、この教えに真っ向から反論する研究者も多く、もしかするとそう遠くない未来、仏教の教えを柔軟に捉える教徒も増えるかもしれません。

法律上は問題なし

宗教上は人の思いや教義が複雑に絡まっていますが、法律上はペットは人と同じ墓に入っても問題なしとされています。というのも、お墓に関する法律は【墓地、埋葬等に関する法律】、通称墓埋法に記されていますが、この法律にはペットの火葬や埋葬については一切書かれていません。法律においては書かれていないことはルール上問題なしとされているため、ペットの埋葬に関しては管理者の意向に委ねられています。

また環境省が昭和52年に動物霊園事業で取り扱う動物の死体は廃棄物に該当しないと公表しています。このことから、少なくとも法律上は【人間と同じお墓に入る動物は副葬品扱い】と見なされているということになります。生きている愛玩動物は飼い主様の所有物扱いになっていますし、そういう意味では確かに副葬品と捉えられるのは必然かもしれません。

ペットと一緒に入れる霊園や墓地は少ないのが現状

上記をまとめると、【仏教的にはNG(ただしこの考えを否定する人も多い)】【法律的には問題なし】となります。実際にお墓を管理する人は仏教徒であり、法律的には管理者に委ねられていることから、ペットと一緒にお墓に入る事を許可している霊園や墓地はまだまだ少ないのが現状です。

これは別に仏教徒が嫌がらせをしているわけではありません。宗教上の理由でお肉を食べない者がいるように、仏教徒もあくまで教義に則って拒否しているだけです。宗教を他の国ほど信仰していない日本人からすると信じられないかもしれませんが、こうした教えを生まれた時から説かれてきたという人も世界から見れば珍しくありません。

ただし、近年は時代の流れを汲んで配慮する宗教も増えてきており、仏教でもその流れは着実に訪れています。今はまだペット許可のお墓は少ないですが、少しずつそういった施設も増えていくでしょう。

ペットと一緒のお墓に入る方法

宗教の教えを重んじる事は立派なことですし、それ故の感覚の違いを批難すべきではありません。しかしそれでも、動物をペットとして側に置き、可愛がってきた飼い主様が多いことには変わりありません。

ここではペットと人間が一緒のお墓に入る方法について解説していきます。

一般墓

歴史が長い寺院や古くから運営管理されている霊園は、宗教の教えを大切にしている人が管理している事が多く、ほとんどの場所がペットと一緒にお墓に入る事を許可していません。その一方で比較的新しめの霊園の場合、制限を設けることもありますが、霊園の一部をペットと一緒に入れるスペースにしている事もあります。

特に民間霊園は、管理者が無宗教、宗教に拘らない人が多く、ペットと人間の関係についても寛容的です。新しめの民間霊園となるとそこまで数も多くはありませんが、一緒に入りたい人は探してみましょう。

永代供養墓

永代供養墓とは、様々な理由によって持ち主がお参りやお手入れができない状況でも、お寺や霊園の管理者が一定期間管理してくれるお墓のことを指します。期間は場所によって異なりますが、基本的には33回忌や50回忌の場所が多いですね。期間を過ぎたあとは他の方の遺骨とまとめて埋葬(合祀)します。

この永代供養墓も近年は家族単位で申し込めるプランにオプションとしてペットも許可しているものが増えてきています。因みに、ペットだけが先に亡くなった場合でも、ちゃんとペットを埋葬してくれますよ。

ペットと一緒のお墓に入りたいならやるべきこと

ペットといっしょのお墓に入れる霊園や墓地を見つけたとしてもそこで終わりではありません。家族に自分の意志を伝えたり、自分の方が先に亡くなってしまった場合の対策をするなどやるべきことはまだあります。特にご家庭によりますが、家族との話し合いは決して楽ではないでしょう。

ここではペットと一緒のお墓に入るならやっておきたい事、やるべき事について解説していきます。

家族とよく話し合う

ペットと一緒のお墓に入るということは、先代や家族と一緒のお墓には入れないことを意味します。もちろん必ずとは言えませんが、ペット可のお墓が最近になってようやく増えてきたことを考慮すると、今までのお墓にペットは入れないでしょう。そうなると家族に反対されたり、言い争う事にもなるかもしれません。

もし言い争うことになっても、決して感情的にならずに自分の思いをちゃんと伝えましょう。少々酷ではありますが、もともとイレギュラーなのはこちら側です。家族としてはちゃんと自分の子供も一族と一緒のお墓に入ってほしいと思うのは当然でしょうし、もし家族が敬虔な仏教徒なら更に難しい話になります。

仏教の教え的には動物と人間が同じ墓に入るのは好ましくない、ペットも同じ家族として扱いたい、これらはどちらも間違いではありません。家族には家族の主張が、飼い主様には飼い主様の主張がそれぞれあることを忘れてはいけません。両者の気が済むまで話し合い、互いに納得のいく答えを出しましょう。

自分がペットより先に亡くなる可能性について

人間も動物も、いつ亡くなるかなんて誰にもわかりません。ご年配の方の中には、「もしペットよりも自分が先に死んだらどうしよう」と心配になる人も多いはず。もちろん、ご年配以外でもこういった思考になる人も少なくないでしょう。

その場合はエンディングノートを作成しておきましょう。これは遺言書ほど格式張った物ではなく、あくまで伝言程度の気持ちで書くものになります。もちろん、遺言書のような法的効力は持ちませんが、家族や親族に宛てる手紙のような役割を果たしてくれます。

家族や宗教と自分の意思の違いをどう受け取るべきか

大切なペットと一緒のお墓に入りたい…そう思うのはとても素晴らしいことですし、何も間違ってはいません。しかし、宗教や価値観からそれを拒む人たちの意見も間違っているわけではありません。それぞれが違う考えを持つことに対して批判的になるのではなく、個々の意見に耳を傾け尊重する事が大切です。

その上で、家族に自分の意思をしっかりと伝えたり、ペットと一緒のお墓に入れるお墓を探していく必要があります。人にはそれぞれの主張があることを忘れずに、なるべく温和な方法で自分の主張を貫いていきましょう。

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