実はペットにとって危険なノミやダニの対処方法

夏も真っ盛り、熱中症に気をつけつつも散歩や海、山など楽しいイベントが盛り沢山な季節。そんな素敵な夏ですが、楽しい一時を邪魔する存在がいますよね?そう、ノミやダニなどの吸血昆虫です。

数ミリ程度の小さな身体の割に昔から人々から忌み嫌われている吸血昆虫。すばしっこかったり一度吸血するとしばらく離れなかったりで、大変鬱陶しいですよね。しかし、吸血昆虫の真の恐ろしさは吸血行動そのものではなく、もっと別のところにあるのです。

今回はノミやダニの恐ろしさ、そしてその対処法について解説してきます。

目次

ペットのためのノミ対処法

小さいくせにぴょんぴょん飛び回り、繁殖力も凄まじいノミ。日本ではせいぜいその程度の認識ですが、実は世界にとってはあのペスト(黒死病)を媒介する張本人として恐れられています。

ここではそんなノミの恐ろしさと対処法について解説します。

ノミの恐ろしさ

ノミは体長1mm以下、大きくても9mm程度しかない凄く小さな昆虫で、世界各地で1800種類、日本ではヒトノミ、ネコノミ、イヌノミなどが代表的です。ノミの大きな特徴はなんと言っても規格外な跳躍力で、翅がないのにも関わらず自身の体長の200倍もの大ジャンプをすることができます。私たち人間で例えると300メートル以上も飛び上がっていることになりますね。

すばしっこい上に蚊よりもしつこく、ノミを漢字にすると【蚤】となり、掻くという漢字も蚤に刺された所を手でかいている様子から付けられたほど。吸血昆虫としては蚊やマダニと並んで有名であり、そもそもノミという名前も血を飲むから※1だとされています。蚊が産卵のためにメスのみが吸血するのに対し、ノミは必要な栄養を確保するためにオスもメスも吸血するため、必然的に被害も大きくなるというのも厄介なところ。

※1他には跳ぶという意味からだという説もあります

ノミが好む環境

ノミは湿度と温度がバランス良い環境を好み、そういった意味では日本の室内は最高の環境です。さらにノミは繁殖力が異常に高く、1匹のメスが100〜400個もの卵を産みます。しかも環境さえ整っていれば3日程度で孵化するため、1匹でもノミを見かけたのであれば、大繁殖している可能性が高いです。なんせメスが10匹もいれば、1ヶ月で20万匹以上もの卵と幼虫が出来上がるのですから。

ノミがよくいるのは蚊ーペットや部屋の隅、湿った場所や寝床など、隠れられるかつ【ノミにとってご飯がありつける】場所。特に蚊ーペットは奥に潜んでいれば掃除機でも取れないため、こまめに掃除していてもノミを排除できない事が多いです。

ノミ相手にやってはいけないこと

ノミ相手にやってはいけないのが【ペットに付いてるノミを取るだけで安心する】ことと【潰してはいけない】ことです。順に説明していきましょう。

まず1つめですが、実はノミが吸血する対象の体表に留まっている時間は非常に短く、寄生してから8分程度で吸血を開始し、1日平均30個の卵を産みます。つまり、たった数匹のノミを排除したところで、ノミ全体の総数にはさして影響が出ません。ノミを取り終えても、周囲にまだまだノミがたくさんいると思って対処しましょう。

2つめはよくやりがちですが、ノミを潰してしまうとノミの体内に寄生している瓜核条虫(サナダムシ)がペットの体内に入り込んでしまい、数によっては下痢や嘔吐の原因となってしまいます。ノミはノミ取りで取った後に、水に入れておけば溺死するので、焦って潰さずにちゃんとした方法で取り除きましょう。

ペットのためのマダニ対処法

可愛い愛犬と楽しい散歩の最中、ちょっとした茂みに入ってしまうことってありませんか?特に犬は好奇心が旺盛ですから、茂みに何か見つけたらふらふら〜と寄ってしまいがち。しかし、草場にはマダニが潜んでいることが多く、油断していると吸血されてしまい、下手をすれば感染症を引き起こすこともあり大変危険です。

ここではマダニの恐ろしさや対処法について解説します。

なぜマダニが恐ろしいのか

ダニは蚊やノミと同じく吸血昆虫で、分類上はクモの仲間です。こいつの恐ろしいところはなんといっても吸血方法であり、なんと皮膚を切り裂いて咬みつきながら吸血してきます。普通の吸血昆虫は針状の口吻を皮膚に突き刺して吸血しますが、マダニは鋏のような口を用いて吸血するのです。そのため無理に引き抜こうとすれば頭部が皮膚に残ってしまいます。

ダニの最も恐ろしいのが様々な感染症のリスクがあること。ノミはペストの媒介者になることもありますが、それはあくまで海外の話※1。しかしマダニはバベシア症やエールリヒア症といったペットにとってとても危険な感染症を引き起こすほか、人間に感染すると危険な日本紅斑熱やQ熱、ライム病、重症熱性血小板減症候群(SFTS)も媒介しています。

ノミが海外にとっての脅威であるとするならば、マダニは世界にとっての脅威と言えるでしょう。

※1より具体的に言うのであれば、日本でも一時期流行していましたが、現在は検疫の徹底により80年以上感染報告がありません。

マダニが繁殖しやすい環境

ペットの生活に深く関わって来るダニはマダニとチリダニです。このうちマダニは主に外で行動するため、茂みに入らなければそうそう咬まれることもありません。しかし、チリダニは別で、室内で繁殖をすすめるため注意な必要です。ノミほどではありませんが、それでも1匹で100個程度の卵を産み、さらに日本の住みやすい室内環境ではほぼ一年中繁殖できます。

チリダニは皮脂や食べこぼしを食べるため、蚊ーペットやベッド、ソファなどに潜むことが多いです。繁殖力も相まって、定期的に掃除していないと数十万ものダニが潜んでいるのともあるため、常に清潔にしておく必要があります。生きているチリダニを排除するのはもちろんですが、死骸や糞も一緒に掃除しましょう。放っておくとハウスダストの原因になります。

また家の中でネズミを見かけた場合はイエダニにも注意。ネズミに寄生するほか、人も吸血します。

ダニ相手にやってはいけないこと

マダニは数日かけて吸血し続けますが、ノミと同じく潰したり、下手に引き抜こうとしないでください。マダニはセメント物質を分泌して身体をがっちり固定してから吸血するため、無理に力を加えると危険です。

マダニの頭部が体表に残って化膿の原因になったり、吸血された血液がマダニの血液と一緒に逆流して感染症を引き起こす可能性があります。可愛そうだからとすぐに摘出しようとせず、動物病院を受診して除去してもらいましょう。

また飼い主自身が咬まれた時も対処法は同じで、皮膚科や外科に行って除去してもらってください。

ペットがノミやダニの被害に合わないために

ノミもダニも、小さな見た目とは裏腹にとっても恐ろしい昆虫です。除去しようにも、ノミは専用の道具と水が無ければできませんし、マダニに至っては獣医師に頼るしかありません。吸血された時の対処法も大切ですが、それ以上にそもそも被害に合わないようにすることが一番です。

ここではペットがノミやダニに吸血されないようにする対策について解説します。

部屋の中は清潔に

これまでの解説から分かるように、ノミやダニは繊維がしっかりしている場所に紛れ込むことが多く、掃除機をかけてもしっかりと繊維を掴んで離れません。見た目はきれいでも、しっかりとノミやチリダニを排除していく必要があります。

最近は小さな子供やペットに悪影響を及ぼさない害虫よけの部屋スプレーなども売られているため、部屋を掃除して繁殖しにくい環境を作りつつ、ダメ押しで部屋スプレーを撒くのが良いでしょう。また部屋だけでなく、犬や猫など毛があるペットはブラッシングやシャンプーなどのお手入れにも気を使います。痒がっている場所を探したり、ノミやダニの糞をちゃんと洗い流すことが害虫駆除につながります。

犬を散歩させる時の注意点

犬との毎日の散歩は健康のためにも欠かせませんが、茂みや草むらは避けた方が良いでしょう。マダニは地上から1m程度離れた植物に隠れ潜んでいるため、そういった場所にはそもそも行かないにこした事はありません。また、都会であれば自然公園、田舎であれば畑やあぜ道などにも生息していますので、近くを散歩する際は要注意。

散歩し終わったらブラッシングついでにマダニに吸血されていないかを確認し、もし見かけたら動物病院を受診してください。前項でも解説しましたが、決して自分で抜こうとはしないように。マダニは普段は小さいながらも、一度吸血行動を始めれば1週間はずっと吸血し続け、さらに最終日付近で急激に吸血スピードを上げます。逆に言えば、散歩帰りの時点では凄く小さいため、見落とさないように注意しましょう。

予防薬について

人間の場合、外出時は皮膚を露出さえしなければそうそうマダニに咬まれることはありませんが、犬はむしろ皮膚を露出させるのが普通です。服を着させている飼い主も多いですが、それでも全身防護するわけにもいかないでしょう。よって、散歩の際は予防薬で予防するのが最も効果的です。

予防薬には経口薬と外用薬の2種類があり、それぞれメリットがありますが、近年は経口薬が多いですね。薬と聞くとなんだか警戒してしまいますが、ジャーキータイプや味付きの錠剤がほとんどで犬も美味しく食べてくれます。ただし、ジャーキータイプは大豆を使用している事が多いため、アレルゲンとなる可能性があります。念の為、使用する前に動物病院でアレルゲンの検査をしておきましょう。

外用薬は少し前には当たり前だった首の後ろに垂らすタイプ。簡単かつ時間も取らないため一見有用ですが、薬品耐性を持つマダニが増えたため、現在では経口薬がおすすめされる事が多いです。

ノミもダニもとっても怖い昆虫

ノミやダニは鬱陶しいと思うことはあっても、蚊のデング熱などのようにメジャーな伝染病を媒介しないためか、吸血昆虫の中でも警戒度が低く、被害に合う人も少なくありません。彼らは実はとても恐ろしい存在で、繁殖力や対処の難易度を考えるとその脅威は決して蚊に劣りません。

今回解説したことをしっかり覚え、ノミにもダニにも邪魔されない楽しい夏を過ごせるようにしましょう。

天国への扉コラム