犬が熱中症になったらどうすればいいのか?対策も合わせてご紹介!

犬は長い間人間と共に暮らしてきましたが、それより前は当然自然の中で生活していました。そのためか、しばしば熱中症などの気候による症状に強いはずと勘違いしてしまっている人を見かけます。また、そもそも熱中症を重く見ていない人も少なくありません。

熱中症は初期症状だけでいえば大げさなものには見えず、実際ちゃんとした応急処置と対策をしていればそれほど大事にはなりません。しかし、いざ重症化してしまうと命にすら関わる危険な症状へと姿を変えます。たかが熱中症と油断せずに、愛犬のために万全の対策といざという時の応急処置について学びましょう。

今回は犬の熱中症の症状や応急処置、有効な対策について解説していきます。

目次

犬にとっての熱中症の危険性

犬を抱っこすると、暖かくて安心しますよね。実は本当に犬は私たちよりもほんの少し体温が高いのです。しかし、これは別の視点から見ると熱中症にかかりやすい事も意味しています。

ここでは犬にとって熱中症がどれだけ危険なのかについて解説します。

犬も熱中症になるのか

そもそも犬も熱中症になってしまうのかという疑問ですが、これは結論から言ってしまうと【人間よりも熱中症になりやすい】です。理由は2つ、基礎体温の高さと体温調節が苦手ということ。順に解説していきます。

まず基礎体温についてですが、皆様は犬を抱っこしたことがあるでしょうか。フカフカの毛や厚い皮膚、そしてほんのり暖かい感覚がなんとも心地良いですよね。実は犬の基礎体温は38度前後と人間よりも少し高め、つまり本当に暖かいのです。熱中症は体温が40度を超えたあたりから症状が出始めると言われており、犬はたった2度体温が上がるだけで40度に到達してしまいます。

次に体温調節が苦手ということですが、これは汗腺が少ないから。私達人間は汗を出すことで体温調節を行っていますが、この汗を出す器官のことを汗腺と呼びます。人間は身体の至る場所に汗腺があるのですが、犬は肉球や鼻先にしかないため汗を欠きづらく、その結果として体温が上手く調整できないというわけです。

この2つの理由から、犬はむしろ人間よりも熱中症のリスクが高いと言えるでしょう。

意外と知られていない熱中症の恐ろしさ

熱中症は軽い症状であれば木陰で休みつつ、十分な水分補給をする事で治ります。そのためか時折「熱中症は気をつけていれば怖くない」と思っている方々を見かけますが、断じてそんな事はありません。熱中症はとても怖い症状なのです。

例えば、厚生労働省が発表している【熱中症による死亡数 人口動態統計】によると、令和2年には1528人が熱中症によって命を失っています。帽子を被り、自動販売機で手軽に水分補給が出来る私たちですら油断をしていると命に関わるのが熱中症です。これが更に暑さに弱い犬だとどうなってしまうかは想像に難くないでしょう。

実際、あらゆる動物病院のブログや獣医師のインタビュー記事などを参照しても「運ばれてきた熱中症の犬の3割〜4割が亡くなっている」といった内容が記載されています。熱中症は私たちが思っている以上に恐ろしいものであり、特にペットを飼っている飼い主様は十分に警戒しなくてはいけません。

室内でも熱中症になる

「熱中症は外だけでしょう、うちの子は室内だから大丈夫♪」と思っている人、意外と多いです。予め言っておくと、この考えはとても危険。熱中症は、むしろ屋内こそが怖いのです。日光が直接当たる屋外は喉も渇きやすく、また頭がクラクラするといった初期症状を自覚しやすいです。

これに対して屋内は湿気や熱気がこもりやすく、汗も欠きづらい上に喉の渇きも実感しにくいため、気が付いたら熱中症になっていた……なんて事も珍しくありません。これは犬でも同じことで、時と場合によっては飼い主様が水分補給を促さないと、たちまち犬が熱中症になってしまうでしょう。無理に飲ませる必要はありませんが、あまりにも水を飲まないなと思ったら警戒しておいた方が良いです。

また犬に留守番をさせる時にクーラーを稼働しないで出かける、車に犬を置いて行くなどの行為は絶対にやめて下さい。室内温度などの状況によっては数十分で重度の熱中症になってしまうことすらあり、下手をすれば命の保証もできません。いかなる理由であったとしても、放置だけは絶対にしないようにしましょう。

犬の熱中症の主な症状

熱中症は初期症状であれば適切な処置を行えば完治する一方で、重症化してしまうと後遺症が残ったり、命を落としてしまうこともある危険な側面も持ち合わせています。初期症状をしっかりと見極め、早期に発見できるよう心がけましょう。

ここでは犬の熱中症の症状や応急処置について解説します。

初期症状

熱中症は初期症状では以下のようなものが挙げられます。

・パンティングをする※1

・心拍数の増加

・口や舌が赤くなる

・目が充血する

・よだれが増える

・食欲不振

・落ち着きが無くなったり、逆にぼーっとする

これらは熱中症のサインとも取れるもので、もし上記の症状が見られるようであれば熱中症の可能性があります。木陰で休ませたり、水分補給を十分にさせ、念の為動物病院で診察を受けさせてください。

※1はっはっはっと喘ぐような呼吸のこと。唾液を蒸発させる事で体温を調節しているのです。

重度の症状

熱中症が進行すると以下のような症状が出てきます。

・嘔吐や下痢

・脱水症状

・けいれん

・チアノーゼ※1が見られる

・意識を失う、失神

このような状態まで行くとかなり危険であり、最悪の場合を想定しなくてはいけません。また仮に治ったとしても、何らかの後遺症が残る事が多いです。この段階に入る前に気づき、動物病院に行くことがベストです。夏は少しでも元気ないなと思ったら、すぐに診察くらいの心構えでいったほうが良いでしょう。

※1血液中の酸素が足りなくなっている状態で、皮膚が青くなる。犬の場合は舌や口の中が分かりやすいです。

応急処置

愛犬が熱中症になった際は、ただちに動物病院への連絡と応急処置をしましょう。正しい処置を行うことで、愛犬が助かる可能性がグンと高まります。ここでは基本的な応急処置について見ていきましょう。

まず何よりも大切なのが、日光が当たらずかつ涼しい場所に移動させることです。外なら日陰や空調が効いている屋内へ、室内なら風通しの良い場所が最適。次に水分補給を、ただし愛犬が飲みたくなさそうなら無理に飲ませないでください。その後は氷のうを用意し、頭や首筋、喉、脇の下など太い血管が通っている場所に置いて体温を下げます。用意できない場合は濡れタオルなどでも大丈夫です。

ペット用の体温計で体温を測りつつ、40度を下回った時点で応急処置を終了してください。あまり冷やしすぎると却って逆効果になります。その後は容態を見つつ、動物病院で診察を受けさせましょう。

犬の熱中症対策

これまででお伝えしたように、熱中症はとても恐ろしい症状であり、早期発見が肝となります。とはいえ、そもそも熱中症にならないようにする対策こそが最重要であることに変わりはありません。熱中症になるのに場所も時間も関係ないことを念頭に、常に万全の対策をしていきましょう。

ここでは犬の熱中症対策について解説します。

エアコンによる室温・湿度管理

犬は気温の変化に敏感な生き物であり、先述したように暑さにも弱いです。そのため、特に夏と冬は常時エアコンを稼働させ、最適な室温・湿度管理を徹底しましょう。具体的には、室温は22℃〜27℃、湿度は50%程度を維持するようにしてください。あまりに外との気温差が大きいとクーラー病になってしまうため、気温や愛犬の状態を見て微調整することも大切です。

また、エアコンの稼働は本当に常時ONにしておくこと。寝るときはもちろん、ほんの少しだけでも愛犬をお留守番させるのであれば、かならずエアコンが稼働しているか確認してから出かけるようにしてください。万が一飼い主様が不在の時に熱中症になってしまっても、室内に誰もいなければそのまま重症化してしまいます。

もしエアコン代が気になるようでしたら、以下のことをしてみると節電できますよ。

・エアコンのフィルターを掃除して電力消費量を抑える

・サーキュレーターを使用して効率的に空気を循環させる

・古いエアコンは買い換える

ただし、エアコン内部の掃除は火事の原因になりますので、絶対に業者に頼んでください。

水分補給の重要性

水分補給はどんな生物であっても、日々の生活に欠かせない行為です。どんなに喉が渇かなくても、水分は徐々に失われ、やがては熱中症や脱水症状などに陥ってしまいます。私たち人間がそうであるように、犬にとっても水分は定期的に補給しなくてはいけません。

しかし、愛犬の中には水をあまり飲もうとしない子も少なからずいます。軽度の熱中症や夏バテ、老犬、元々水をあまり飲まないなど様々な理由があるかとは思いますが、いずれにせよそういった場合は水分補給の仕方を変えたほうが良いでしょう。

最も簡単かつ有効なのは食事と水分補給を一緒にさせることです。ドライフードを与えている場合はウェットフードにしてみたり、水に味を付けてスープにしても効果的。もちろんこれだけで必要な水分量を確保できているとは言えませんが、補填するという意味では十分です。

あとは水を与えるタイミングにも注目。起きた直後や運動後などはどんな犬でも喉が渇いています。新鮮な水を沢山飲ませてあげましょう。ただし、無理やり飲ませるのはNGです。もし上記でも改善しないようであれば、病気の可能性もありますので、動物病院で診察を受けさせてください。

散歩する際の注意点

愛犬との散歩は何よりも楽しい時間ですが、夏は散歩の時間帯も調整しなくてはいけません。というのも、夏の日中は地面がとても熱く、アスファルトで舗装されている地面は時間帯によっては65℃以上にまで達することもあるのです。

私たちには靴がありますが、犬は肉球が地面に着くためヤケドの危険性がある上、頭やお腹が地面と近いため地熱による影響を受けやすいです。油断していると、すぐに熱中症になってしまうでしょう。

散歩は未明か夜に限定し、水分補給用のペットボトルや汗を拭くためのタオルを持った上で出かけるようにしてください。

熱中症対策は万全に!

熱中症は夏ばかりというイメージですが、実際には一年中通して起こり得る症状です。外出時には気温や湿度を確認し、水分補給と汗を拭くためのタオルは忘れずに。部屋の中ではエアコンによる室温管理を徹底し、常に新鮮な水が飲める環境を維持してください。

また熱中症は対策していたとしても発症してしまうこともあります。その場合は初期症状が見られた段階で速やかな応急処置と、動物病院での診察を必ず行ってください。夏も終わりを迎えそうですが、まだまだ暑い時期は続きます。気を抜かずに万全の対策と愛犬の体調チェックを意識しましょう!

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