犬のレプトスピラ症って?各症状や予防法について解説します

レプトスピラ症は犬や人に感染すると危険な症状が出るものの、発生件数の少なさからあまり馴染みがありません。とはいえ犬の混合ワクチンでは8種以降にレプトスピラ菌に対するワクチンが入っているほか、人の重症型であるワイル病は一時期風土病として恐れられていたなど決して無視できない病気です。

今回はレプトスピラ症とはどんな感染症なのか、症状や予防法についてお話していきます。

目次

1犬のレプトスピラ症について

そもそもレプトスピラ症とはどういった病気なのか、人によっては名前すら聞いたことがないという方も多いでしょう。まずはレプトスピラ症について簡単に見ていきましょう。

1,1レプトスピラ症とは

レプトスピラ症とはレプトスピラ菌によって引き起こされる急性熱疾患、つまり発熱を伴う感染症です。今回の記事はあくまで犬のレプトスピラ症についてなので仔細は省きますが、本来は犬や人間も含めた哺乳類すべてに感染する人獣共通感染症(ズーノーシス)であり、可能性は低いながら人から人への感染も確認されています。

レプトスピラ症はいくつかの血清型があり、感染した型によって症状や進行速度が異なります。特に犬の場合は下記の4種類が確認されています。

・甚急性

最も症状が激しく、発熱や粘膜等からの出血、タール状の黒い便が見られ、重度の場合は3日程度で死亡する事もあります。

・急性

甚急性ほどではないにしても症状が重く、嘔吐や脱水を伴います。また、腎不全や肝不全の症状が見られ、死亡率も高いです。

・亜急性

急性よりも緩やかに進行し、急性腎不全の症状が見られます。

・慢性

亜急性よりも更に緩やかで、多飲多尿や腹水が見られます。

1,2レプトスピラ症の感染原因

レプトスピラ菌は保菌しているネズミや犬、猫などの哺乳動物の尿から排出され、水や土壌を汚染させます。

そのため、汚染された水や土壌、保菌している動物と接触した時に皮膚や粘膜から感染するのが主な感染経路となっています。

ただし、感染したからといって必ず発症するわけではなく、猫など一部の動物は発症してもほとんど症状が出ません。とはいえ感染している事に変わりないため、保菌動物として接触するのは避けた方が無難です。

1,3感染しやすい傾向はあるのか

犬であれば犬種や年齢に関係なく感染する可能性はあり、また感染のしやすさに差異はありません。どちらかと言えば環境や散歩する場所などの飼育状況の方が大きく関与しています。

前述したように主に汚染された水や土壌を経由して感染するため、流行地の水辺やその近辺をよく散歩している場合は感染しやすく、またネズミなどの保菌している動物と接触しやすいアウトドア派の犬も感染する確率が高くなります。

流行地かどうかは農林水産省のホームページで確認できます。ただし、報告が義務付けられている血清型は7つのみであり、報告よりも多い可能性もあります。

2犬のレプトスピラ症の症状

レプトスピラ症は軽度なものだと自然に治りますが、重度だと死につながる危険な側面を持ち合わせています。ここではレプトスピラ症の各症状について見ていきましょう。

2.1感染が軽度の場合

感染がごくごく軽度のものだと、ほとんど自覚症状がないまま自然治癒します。ただし、それでも保菌しているため、感染の疑いがある動物には近づかない、ペットの場合でも直接素手で触れないように注意しましょう。

軽度の症状では発熱や悪寒、食欲不振などの風邪に近い症状が見られます。身体検査では貧血や肝不全、腎不全の症状が認められます。

2.2感染が進行すると

感染が重度の場合、前項でお話したように血清型によって症状や危険性が異なります。基本的に出血や嘔吐、腎不全、肝不全に発展し、治療が遅れると死につながります。

また、たとえ回復したとしても慢性腎不全や肝不全が残ってしまう可能性があります。注意点として、自覚症状がない犬や回復した後の犬でもレプトスピラ菌が残っており、数ヶ月から数年はレプトスピラ菌を含んだ尿を排出してしまいます。

2.3人が感染した場合

レプトスピラ症は人間にも感染します。症状も多様で、倦怠感や熱っぽさといった風邪のような症状だけで治る軽症型から、黄疸や出血、腎障害が見られる重症型まで様々です。また、重症型の場合は死にもつながり、ワイル病と呼ばれます。

ワイル病は潜伏期間を過ぎると発熱や悪寒、頭痛、腹痛が生じ、やがて黄疸や出血といった症状が出始めます。軽症型の場合はきちんと治療すれば大丈夫ですが、ワイル病の場合は早期治療が重要で、もし適切な治療ができない場合の致死率は30%ほどだと言われています。

3犬のレプトスピラ症の予防法

レプトスピラ症は件数こそ少ないですが、感染しないわけではありません。自分や愛犬がターゲットにならないよう、レプトスピラ症の予防法を覚えておきましょう。

3.1流行地では水に近づかない

レプトスピラ症の一番の予防法は、犬も飼い主も、そもそも流行地では水の中に入らないようにすること。特に怪我をしている場合は、レプトスピラ菌だけでなくその他の細菌も侵入しやすいため絶対に入らないようにしましょう。

もしどうしても入る場合はゴム手袋やゴム長靴など手足を防護できる物を着用のうえ、激しい運動などで水が口や目に入らないように行動してください。

また、同じような理由から農作業をしている人は土壌や水に直接触れる事を避ける、家畜やペットの尿に触れたらしっかり手洗いというのも有効です。

3.2ネズミに注意する

レプトスピラ菌は特にネズミなどのげっ歯類が保菌しており、生涯にわたって尿から排出し続けます。そのため、ネズミが発生しない環境作りを心がけ、もし捕獲した場合は直接触れないようにするようにしましょう。

また、犬や猫は本能からネズミを狩猟してしまう可能性が高い事にも注意が必要です。もしペットがネズミを仕留めた形跡がある場合は、レプトスピラ症に感染したと想定した上で動物病院に相談してみましょう。

3.3ワクチン接種は有効?

レプトスピラ症にはワクチンがありますが、コアワクチンの方には入っておらず、8種および10種の混合ワクチンの方に入っています。

また、8種にはイクテロヘモラジーとカニコーラが、10種にはそれらに加えてグリッポチフォーサとポモナが混合されています。8種の2つは人獣共通感染症としても警戒すべきものであり、イクテロヘモラジーは前項のワイル病のもとです。感染する可能性がある場合は、最低限でも8種混合ワクチンの接種をおすすめします。

ただし、レプトスピラ症のワクチンは少々複雑で、簡単に言えば対応した血清型にしか効果がありません。つまり、ワクチンが想定していない血清型に対しては効果が発揮されないのです。

4流行地に行く際はレプトスピラ症にご注意を

レプトスピラ症は件数が多いわけではなく、大体年に20件〜30件程度です。しかし、一度発症すれば危険な感染症である事に変わりないため、沖縄県など暖かい地域に行く際は注意しましょう。

また、レプトスピラ症が珍しいのは日本だけの話で、全世界では年間30万〜50万件発生しています。特に熱帯や亜熱帯の国へ旅行する際は十分な対策をした方が良いでしょう。

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