犬の水分補給の大切さと飲ませたい飲み物について

「遭難の際は食べ物よりも水の確保」とまで言われるほど、水分補給は動物が生きる上で非常に重要なこと。もちろん、そうそう遭難なんて起きるわけではありませんが、水分が失われていくと脱水症状になってしまいます。まして、犬の場合は水分補給の手段は飼い主によるものがほとんど。

今回は犬が脱水に陥らないためにも、水分補給の重要性と飲むのに最適なお水に関してお話していきます。

目次

1水分補給の重要性と脱水症状

水分補給は大切というのは当たり前ですが、一方で脱水症状については軽く見られがち。脱水症状は軽度であればそこまで深刻ではありませんが、重症化すると命にすら関わる状態です。まずは脱水症状の危険性と、犬の一日の適切な水分量について見てきましょう。

1,1脱水症状

夏頃になると、脱水症状で倒れたなんてニュースを耳にします。実際、重度の脱水は昏睡や死の原因にもなるため、私たちが想像するよりも遥かに危険な症状なのです。更に犬は身体全体が地面と近いため地面の熱を受けやすく、散歩が必要な点も考えると、犬は脱水に陥りやすい動物という見方もできます。

特にシニア犬や認知症の犬は水分補給をあまりしなくなる傾向が強く、飼い主が率先して水を飲ませてあげないと、気が付かない間に脱水に陥っている事もあります。

下記に脱水症状のよく見られる症状についてまとめましたので、これを参考に毎日の健康を心がけてください。

・食欲がない

・元気がない

・嘔吐や下痢

・パンティングが激しい

・尿の量が少なく、においや色が濃い

1,2冬は隠れ脱水にもご注意を

夏になると脱水症状の危険性を知らせるニュースが多くなりますが、実は脱水症状自体は何も夏ばかりではありません。むしろ、「夏は脱水症状になるから気をつけよう」と意識するため、脱水への警戒もあって十分に予防できる季節と言えるでしょう。

一方、秋から冬の間は喉の渇きを実感しにくく、犬も積極的に水を飲もうとはしません。加えて、寒くなると暖房で暖かい部屋やこたつで長時間過ごすため、どんどん身体から水分が失われていきます。そのため、脱水はこの季節こそ最も危険なのです。

また、春から初夏にかけても注意が必要。気温が急に上がるため、季節の変化に犬の身体が付いてこれず、脱水が起こりやすい状態になっています。

脱水症状は1年を通して警戒すべき状態です。犬も人間も、適度な水分補給を心がけましょう。どうしても飲みたがらない場合は、水分補給と栄養補給を同時にできるスープやウェットフードを与えるのも手です。

1,3犬が1日に摂取したい水分量

水分というのは『適切な量』を摂取する必要があるだけで、過剰に飲む必要はありません。では犬にとって適切な水分量はというと、体重1kg当たりおよそ50ml〜60mlと言われています。例えばチワワなどの3kg程度の犬なら、およそ150ml〜180mlということになりますね。

この水分量は1日で摂取する総合的な目安ですので、ウェットフードやスープを与えている場合は少し少なめでも大丈夫です。また、犬の運動量や季節によっても適切な水分量は変化しますので、これを目安に調整してください。例えば、夏などの暑い時期はパンティングをして体内の水分量が多く失われるため、少し多めに飲ませたほうがいいでしょう。

この目安よりも明らかに多く飲んでいるのであれば、糖尿病や腎臓に何らかの病気を抱えている可能性があります。特に腎臓関係の病気は、初期症状に多飲多尿があるものが多いため、「ふだんよりも多く水を飲んでいるな」と思ったら、動物病院で診察してもらいましょう。

2犬が飲んでも良い飲み物

水分補給が大切といっても、何を飲ませればいいのでしょうか。水分といっても色々ありますし、変に身体に悪いものを飲ませたら大変だと不安に思う人もいるでしょう。ここでは犬が飲んでも良い飲み物について見てきます。

2,1基本は水道水で大丈夫

意外に思われる方も多いかもしれませんが、安全な水という意味では水道水で大丈夫です。というのも、日本の水道水は他国と比較してもかなり衛生的で安全なのです。その安全の正体は、普段はあまり良い印象を持たれないカルキ臭の正体でもある塩素。

そもそも私たちが利用している水道水は、浄水場で沈殿→ろ過→消毒が徹底して行われているとても綺麗な水。そこに塩素を加える事で、水の中にある病原菌やウイルスといった体に害のあるものを殺菌しています。それによって、安心安全な水が飲めるようになっているわけですね。

実はこの塩素、水に残留して殺菌効果を維持してくれるものでもあります。犬にお水を飲ませるとき、ボウルに溜めて飲ませるという方法をしている人が多いため、汚れていない事を前提にするのであれば水道水が一番適しているという事になります。ただし、例外として『硬水』が出てくる地域は注意が必要です。

因みに、犬がカルキ臭が苦手で飲まない場合は一度沸騰させる事でカルキ臭を抜く事ができます。ただし、沸騰させた直後は熱いため、飲ませる場合はちゃんと冷ましてからにしましょう。

2,2脱水の危険性がある場合は経口補水液

嘔吐、熱中症などの理由で脱水の危険がある場合は犬用の経口補水液を与えましょう。人用の経口補水液しかない場合は、主要成分は同じでも塩分濃度が高いため、緊急時は薄めて飲ませるようにしてください。ただし、どっちにしても常飲させるようなものではないため、あくまでどうしても危険な場合のみに限定しましょう。

食欲不振やシニア犬など、水を飲みたがらない犬は経口補水液ではなく、スープやウェットフードを与えるほうが効果的です。

3犬には避けたい飲み物

飲み物は基本的に水で大丈夫ですが、一方で避けたい飲み物は何でしょうか。次はあまり好ましくない飲み物について見ていきます。

3,1硬水

硬水とはミネラルが多く含まれている水のこと。身体に悪影響を及ぼす可能性は極めて低いですが、胃腸が弱い犬だと下痢の原因にもなるため、避けた方がいいです。因みにこれは人間も同様です。

また、硬水は単純に口当たりが重く飲みにくいため、軟水を飲みなれている犬は硬水を飲みたがらない事があります。日本の水道水はほとんどが軟水ですが、一部の地域では硬水が出てきます。普段から飲んでいるならともかく、旅行の際は注意しましょう。

3,2人間用の飲み物

人間が飲むことを想定された飲み物は、基本的に糖分や塩分が人間が美味しく感じられるように調整されているため、犬を含めて他の動物に与えるべきではありません。中には犬が飲んでもそこまで影響のない飲み物もあるかとは思いますが、いちいち調べるのも面倒ですし、『常時飲める水道水が衛生的』という前提がある以上、無理に他の飲み物を与える理由はないでしょう。

4犬に水を飲ませる時に意識すること

水は動物が生きていくうえで欠かせないものですが、一方で毒になることもあります。放置すれば不純物や細菌が混じって腐りますし、犬の毛やよだれが入った水は不衛生です。また、硬水は飲み辛いため、特に子犬に与えると水を飲む事自体を避けてしまうケースも考えられます。

水を飲ませる時は常に新鮮かつ衛生的に。ある程度の時間が経ったら、ボウルに水が残っていても取り替えて、その際にはボウルをきれいに洗う事も忘れずに。

もし水を飲みたがらない場合は、味のついたスープやウェットフードを与えるのも効果的です。ただし、それだけでは1日の適切な水分量を確保できないため、軽く運動させるなどして少しでも水を飲んでもらえるようにサポートしてあげましょう。

どうしても水を飲まない場合は、病気の可能性もありますので、動物病院で診察してもらう事も視野に入れてください。

天国への扉コラム