犬も食中毒になる?気を付けたい食中毒の症状と対策

年に数回は話題になる食中毒は私たち人間も当然ですが、犬にとっても危険な症状です。特に夏場は高温多湿な日が多く、少し油断するだけで食べ物も簡単に傷んでしまいます。この時期は脱水症状や熱中症も危険ですが、食中毒も同じくらい危ないもの。食べ物の管理はいつも以上に徹底しましょう。

今回は犬にとって食中毒がどれだけ危ないものなのか、食中毒にならないようにすべきことはなんなのかについて解説していきます。

目次

犬と食中毒

犬は食欲も好奇心も強く、食べている姿はなんとも愛らしいものです。しかし、夏の高温多湿な環境では、食べ物には十分注意しないと食中毒になってしまうかもしれません。人間には冷蔵庫や冷凍庫がありますが、犬たちはそれを自分で使えるわけではないのですから。

ここでは犬と食中毒の関係について解説します。

犬は食中毒を起こしにくい?

犬もそうですが、ペットというのは元を辿れば過酷な自然界で生活していた動物たちです。今現在のペットが生まれも育ちもペットショップだったとしても、その親や遠くない祖先は自然に生きていたことでしょう。そのためか、しばしば「犬は食中毒なんて起こさない」という俗説を信じている人が見受けられます。実際、拾い食いをしてもぺって吐き出すくらいで、お腹を壊すところを見たことが無い人もいると思います。

しかし、お腹を壊さないというのは完全に間違いです。そもそも、自然界で生きている=胃が丈夫というわけではありません。例えば、ハイエナは他の動物が仕留めた死骸を食べる事で有名ですが、新鮮なお肉を選んでいるだけで、腐肉を食べたりはしません。生物全体を見ても、腐肉を食べてもなんともない種族は少数派です。

ペットショップで生まれ育った犬は、細菌への耐性が付いていないため、危ない物を食べれば食中毒になってしまいます。野良犬であればゴミ箱を漁ることもあるため多少は胃が丈夫かもしれませんが、彼らもお腹を壊す時は壊します。食中毒はあらゆる動物にとって起こり得る危険な症状なのです。

犬が食中毒を引き起こす原因

食中毒になる原因は主に3つ、【傷んだ物を食べる】【自然毒】【犬にとっては毒な物を食べる】ことです。このうち私たちが特に気にしなければいけないのが、最後の犬にとっては毒な物を食べること。実は人間にとって美味しいご馳走が、犬にとって毒物であるケースは珍しくありません。有名なのはチョコレートや玉ねぎですが、他にもアルコールやキシリトールなどでも中毒を引き起こします。

また毒なのかがどうかを判断するためにも、なぜ中毒になるのかの理由を知っておくことも重要です。例えばチョコレートは、原料であるカカオに含まれているカフェインやテオブロミンが原因です。カフェインが入っている飲食物は多いわけですから、本来はそれらすべてを警戒すべきなのです。玉ねぎもネギ類に含まれている有機チオ硫酸化合物が毒なため、同じネギ類のニンニクやニラもNG。

このように、ただ特定の食べ物が危ないという認識を持ってしまうと、同様の成分が含まれている他の食べ物を与えてしまう可能性があるのです。

夏は特に注意!

夏は楽しいイベントが盛り沢山な一方で、私たち人間も度々食中毒でニュースになるほど食べ物に関して危険な季節でもあります。犬たちにとっても同様で、特に危ないのが拾い食いです。ペットフードや手作りご飯も痛む可能性こそありますが、飼い主様がちゃんと管理していれば問題ありません。しかし、道端に落ちている物にはそんな管理なんてされていません。

犬は好奇心旺盛な動物で、気になった物にはすぐ飛びついたり口に咥えたりします。幼犬時代に躾けが出来ていれば拾い食いをしなくなりますが、そうでない場合は成犬になってからもクセが抜けない事が多いです。

拾い食いは飼い主様が見ていないところでする事もありますし、その場合は何をいつ食べたのか分からないため対処も難しくなります。散歩中の警戒はもちろん、ご飯の食べ残しや地面に落ちた食べこぼしにも十分気をつけましょう。

犬の食中毒の症状と治療方法

夏は熱中症を警戒するあまり、食中毒にまで意識がいかない人も多いですが、どちらも重症化すれば命に関わる危険な症状です。しっかりと対策していきましょう。

ここでは食中毒の主な症状と動物病院での治療方法、簡単な対策について解説します。

食中毒の症状

食中毒の主な症状としては下痢や嘔吐が見られますが、これは身体に侵入してきた毒を体外に排出するための行為であり、危険な状態ではない限り自然な行為です。ただし、あまりに酷い場合は脱水症に陥る可能性もありますので、状態次第では早急に動物病院に行きましょう。

中毒症状が強い場合は発熱や貧血、血尿などが現れます。

食中毒の治療方法

食中毒の疑いがある場合は動物病院で診察を受けさせましょう。またこの時、【何を】【いつ】【どれだけ食べたのか】を獣医師に伝えられると的確な治療を施せます。治療方法は症状の度合いや食べたものでも変わってきますが、基本的には脱水症状を防止するための点滴を打ちつつ、症状に応じて抗生物質や整腸剤を使用しながら経過を見ます。また貧血の場合は輸血もしていきます。

食中毒の対策

食中毒は傷んだ食べ物による細菌、毒キノコ等の自然毒、犬には毒な物によって引き起こされます。最も警戒すべきなのは、症状の出る時間や度合いは食べた量や種類によって大きく変わる点。

例えばキシリトールは犬には毒ということは解説した通りですが、これは摂取したのち30分程度で中毒になり、少量でも強い症状が現れます。有名なネギ類は半日経っても症状が見られない事もあるため、飼い主が気が付かないで危ない状態になる事も起こり得ます。

また前項では解説しませんでしたが、ブドウも犬にとっては毒物なのではないかと言われています。しかし、こちらは中毒を起こした事例はあるものの、具体的な理由は分からず、また無症状で終わる事もあるのだとか。

このように食べ物や個体差によっても危険性や症状が出るまでの時間が変わってくるため、個別の有効な対策は正直なところ無いと言っていいでしょう。しかし、すべてに効果があり、簡単かつ確実に安全な対策はあります。それは【そもそも人間が食べるものは食べさせない】ことです。

基本的に栄養面はドッグフードで賄えますし、嗜好性の高いおやつは犬にとって十分なご馳走です。色々な物を食べさせたくなる気持ちは分かりますが、健康面でのリスクを考慮すると、犬には犬用の食べ物を与えるのが一番でしょう。

犬の食中毒を予防するには

食中毒は名前の通り食べ物によって引き起こされるもの、言い換えればフード管理を徹底することで食中毒を回避することができます。夏だからこそではありませんが、より危険になるこの時期だからこそ、改めて学んでいきましょう。

ここでは食中毒を予防するうえで重要なフード管理について解説します。

ドッグフードの管理

なにも夏に限った話でもありませんが、ドッグフードの管理は徹底しましょう。と言っても特別な対策をするという意味ではなく、基本的な【封を切ったら早めに食べ切る】【食べ残しはその日中に】【保管は密封した上で冷暗所で】この3点を守れば問題ありません。それでも何か付け足すのであれば、フード用の虫除けや除湿剤などがあれば更に安心です。

ただし水分量の多いウェットフードに関しては、夏はより警戒した方が良いでしょう。食べ残しはすぐに冷蔵庫に入れて、当日食べられないのであれば処分するよう心がけてください。因みに、冷蔵庫から出したばかりのウェットフードは美味しそうに見えないのか、犬はあまり興味を示しません。そういった時は湯煎して温めてあげると効果的です。ただし、電子レンジは火力が強すぎるため使用しないでください。

手作りご飯の注意点

犬を飼っている飼い主の中には、毎日手作りご飯を与えている人たちもいるかと思います。手作りの方が見栄えも良いですし、愛犬のために何かしてあげたいと思う気持ちは素晴らしいものですが、一方で保存面や安全面から見るとより警戒しなければならない点が出てくる事には注意が必要です。

犬用に作られたドッグフードには保存方法や加熱処理といった様々な企業努力が施されていますが、ご家庭で作るとなると限界があります。作ったらすぐに食べさせて残したらその場で処分する、いっそのこと夏場はドッグフードに変えるなど、徹底した管理を心がけましょう。

また使う食材にも注意が必要です。前項で解説したように、人間は大丈夫でも犬には毒な食材は意外と多く、それらを使わずに栄養価のバランスが良い料理を作らなければいけません。

生肉の危険性

自然界で生きてきた犬たちは、生肉であっても場合によっては食べます。飼い主の中には「むしろ生肉の方が食いつきがいい」と考えている人たちも少なくありません。しかし、これは栄養価と衛生面から、あまりおすすめできないのが現状です。

まず栄養面ですが、生肉に栄養がないというよりも専用に作られたドッグフードの方が栄養バランスが良いという意味です。衛生面に関しても、生で食べられるほど新鮮なお肉を調達することは困難でしょう。間違っても焼肉用のお肉を与えてはいけません。

どうしても生肉を与えたい場合は、脂身の少なく骨が無い、人間でも刺身で食べられるぐらいの新鮮なお肉に限定させましょう。ただし、少量のみに留め、何かあればすぐに食べさせるのを止めて動物病院で診察を受けるようにしてください。

愛犬が食中毒になるかどうかは飼い主にかかっています!

私たち人間が食中毒になるのは、食べ物を放置してしまっていたり、消費期限が過ぎたものを口にしてしまったりと当事者にも責任があることが多いです。しかし、飼い犬の食中毒は飼い主の責任になります。犬は自分の食べ物を冷蔵庫から出すことも、食べ残しを冷蔵庫に入れることもできません。拾い食いも、狩猟本能や生き残るための手段として身に着けてきたものであり、躾けをしなかった人にも責任はあるでしょう。

愛犬が毎日おいしいご飯を食べて健康的な生活を送れるか、それとも危険な物を食べて食中毒になってしまうかは、飼い主様の手にかかっているのです。フード管理を徹底して、飼い犬も自分も健康のまま楽しい夏を過ごしましょう!

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