猫の去勢・避妊手術の流れと手術する意味について

猫を飼う場合、ほとんどの人が去勢・避妊手術をするのではないでしょうか。望まない出産、精巣や子宮の病気などを防ぐためにも、繁殖の目的がない場合はなるべく手術する事が推奨されています。

今回は猫の発情期や去勢・避妊手術の流れ、そして近年問題になっている多頭飼育崩壊について解説していきます。

目次

1猫の発情期について

発情期は問題行動を起こす動物も多く、猫も例外ではありません。攻撃的になったり、大きな鳴き声を発したり、自分だけでなく周りまで巻き込んでしまうことも……。

ここでは猫の発情期や発情した時の行動について解説します。

1.1オス猫の発情の場合

まず前提として、オス猫には発情期とよばれる期間がありません。性成熟を迎えたオス猫は、メス猫の発情した声や匂いにつられて発情します。室内飼いによって発情期が一定ではなくなった今、去勢手術をしないオス猫の飼育は昔より難しくなったと言えるでしょうね。また、当然野良猫が発情した場合も、つられて発情するため、他の猫に会わないオス猫も安全とは言い切れません。

ではオス猫が発情したらどうなるのか。繁殖したいオス猫が取る行動は2つ、【メス猫に自分の存在を知らせる】ことと【他のオス猫よりも自分が優秀だと知らしめる】ことです。赤ちゃんにも似た大きな鳴き声、通常よりもより匂いの強い尿をスプレーするなどして「自分はここにいる」とアピールします。また、オス猫としての強さを証明し、邪魔者を追い払うために他のオス猫や人に対して攻撃的になります。

1.2メス猫の発情の場合

メス猫は犬などの動物とは違い、決められた時期ではなく、日照時間の長さによって発情の周期をコントロールしています。そのため、基本的には日が長い春や夏に発情期を迎える事になります。

ただし、電灯や街の灯りでも日照時間と勘違いしてしまうため、室内飼いや都会に住む猫は必ずしも春や夏に発情するわけではなく、秋や冬でも発情してしまう事があります。先述したように、メス猫が発情すればオス猫もつられて発情するため、避妊手術の重要性はオス猫よりも高いと言えるでしょう。

発情期はおよそ1週間から2週間、その間はとにかくオス猫に自分の存在をアピールしようとします。自分が迎える側なため、極端に攻撃的になることはありませんが、鳴き声や匂いの強い尿をスプレーをし、匂いをつけるために背中を床にこすりつける事もあります。そして、それによって理想のオス猫が近づいてくると、尾を左か右に寄せて交尾を許します。

2猫の去勢・避妊手術

猫の去勢・避妊手術は、様々なリスクから早期に行う事が推奨されています。ただ、必ずしも早めに行うだけが正解ではないため、まずは獣医師とよく相談してから決めるのが鉄板です。

ここでは大切な術前検査の重要性や、手術全体の流れについて解説します。

2.1術前検査の重要性

猫の去勢・避妊手術には麻酔処置により動物を眠らせる必要があります。この麻酔処置、実は100%安全とは言えません。術後に何らかの不調が起きることはありますし、最悪の場合は死亡することもあります。そんな事にならないよう、手術するペットの事をよく知るために術前検査を行います。

検査をして、貧血や潜在している病気の有無、内臓に問題がないかを調べ、状態によっては手術を延期又は中止することもあります。それくらい、麻酔処置は慎重を要することです。とはいえ、ペットが麻酔なしで手術することに耐えきれるわけありませんし、暴れてしまう可能性が高いでしょう。麻酔は危険ではあるが避けられない、だからこそ術前検査は必ず行う必要があるのです。

2.2去勢手術の流れ

オス猫は生後6ヶ月〜12ヶ月で性成熟を終えるため、去勢手術は大体6ヶ月前後で行うのが理想とされています。ただし、猫の状態や病気によっては、身体の負担を考慮して手術のタイミングをずらすこともあります。

手術の際は術前検査を行い、問題がなければ全身麻酔で猫を眠らせてから手術します。手術内容はいわゆる外科手術であり、精巣付近の皮膚を1cm〜1.5cm程度切開し、精巣を摘出、止血と縫合をして手術を終了します。ただし、去勢手術は傷が小さく治りが早いため、病院によっては縫合しない場合もあります。手術時間はおよそ20分程度であり、猫の状態が良好であれば日帰りで終わります。

術後は猫が傷口を舐めたりいじらないように、エリザベスカラーという襟巻きのようなものを首に巻いて生活することが多いです。傷口は大体1週間程度で塞がり、それまでは化膿を防ぐために病院から抗生剤や消炎剤が処方されます。縫合している場合、傷口が塞がったら再度動物病院に来院し、糸を抜いて一連の流れが終わります。

術後の猫に、排泄がおかしいなど、何らかの違和感を感じた際は様子を見ようとせずに早急に動物病院に連絡してください。

2.3避妊手術の流れ

メス猫は性成熟が早く、個体によっては生後4ヶ月ほどで始まる子もいるほどです。そのため、なるべく早期の避妊手術が理想。ただし、あまりに早いと身体への負担も大きくなりますので、状況によっては最初の発情期が終わってから手術する場合もあります。

手術はオス猫と同様に外科手術で行います。術前検査を通過したら全身麻酔をして眠らせ、おへそから下部の皮膚を切開、開腹して卵巣のみ又は卵巣と子宮を摘出し、その後縫合して手術は終了です。手術は全体を通して1時間程度かかります。

術後は傷口をいじらないよう、エリザベスカラーを首に巻いて生活することになります。傷口が塞がるまでは激しい運動は避け、抗生剤や消炎剤を塗って回復を待ちましょう。また、その間はお風呂やシャンプーは控えてください。問題がなければ傷は1週間程度で治りますので、その後に動物病院で抜糸すれば一連の流れは終了します。

術後に何か異変があれば、早急に動物病院に相談してください。

3広がる多頭飼育崩壊とその影響

多頭飼育崩壊とは、ペットの数が飼い主が適切に飼育できない程に増えてしまう状態のこと。他人事ではなく、去勢・避妊手術をしていない場合はこうなってしまう可能性が少なからずあるのです。

ここでは多頭飼育崩壊の理由や、それによって飼い主やペットにどのような影響が出てくるのかについて解説します。

3.1多頭飼育崩壊はなぜ起きるのか?

多頭飼育崩壊は、飼い主が適切に飼育できる数を越えてしまう事で起こります。そのため、エサ代や医療費も負担できなくなり、経済が破綻することも珍しくありません。なぜこのような事が起きるのでしょうか?

こうした問題が起きる要因として、飼い主が肉体的、もしくは精神的に問題を抱えてしまっているケースが考えられます。より具体的に言うのであれば、【認知症等の病気】【加齢による判断能力及び体力の低下】【経済面の破綻】が理由で適切な飼育が困難になり、多頭飼育崩壊にまでなってしまったという状況が多いです。

こうした問題は自分だけではどうしようもない部分も多く、周囲からのサポートが得られなければ、解決できずに手遅れとなってしまう事がほとんど。特に近年は高齢者夫婦、もしくは高齢者一人だけの状態でペットを飼う事も当たり前になってきています。問題解決のためには、そのような人達に対する周囲の理解とサポートが必要不可欠となってくるでしょう。

3.2影響その1~飼い主の生活の崩壊~

適切な飼育ができないほどにペットの数が増えたということは、掃除できないほどの糞尿や食べ残しがそこかしこに散乱しているということ。そうなると悪臭はもちろん、その臭いによって害虫が群がり、更にネズミなどの衛生動物も集まってきます。そんな環境に居続ければどうなってしまうのかは、火を見るよりも明らかでしょう。

感染症のリスクが常に付きまとい、糞尿が飛び散って衣服は汚れ、悪臭の被害を受けている近隣住民とのトラブルも考えられます。経済状況も破綻していることによる栄養失調や、賃貸の場合は家賃が払えずに強制退去なんてこともありえるでしょう。生活の崩壊とは比喩でも言い過ぎでもないのです。

3.3影響その2~ペットの健康の崩壊~

不適切飼育及び劣悪な環境での被害は、飼い主だけではなくペットの健康にも及びます。ペットの状態にもよりますが、動物愛護法における虐待に該当することもあり、命すら危ぶまれるでしょう。たとえ第三者に発見され、ペットが保護されたとしても、その後は殺処分される可能性も孕んでいます。

多頭飼育崩壊では、ペットの健康管理もままならない事があり、感染症やケガしている個体も多いです。飼い主に愛されず、周りは弱っている動物と糞尿まみれの環境では精神的にもかなりのストレスでしょう。そんな状態の子を保護できたとしても、猫は人間を警戒してしまい、新しい引き取り先を見つけるのは困難です。

むろんボランティア団体や自治体の人も懸命に里親を探してくれますが、それでも全ての猫に譲渡先が見つかる保証はありません。もし譲渡先が見つからない場合、治療できないほど病気が進行している個体や制御できないレベルの凶暴性が見られる個体は、残念ながら殺処分される可能性が極めて高いでしょう。

4去勢・避妊手術はペットと飼い主のために

猫に限らず、「勝手に手術するなんて可愛そうだ」と去勢・避妊手術を躊躇う人は多いです。確かに、麻酔処置や手術は少なからず身体に負担をかけますし、なにより生殖機能を奪うことには抵抗があります。

しかし、発情を自分でコントロールできない以上、手術していない猫が発情した場合は【交尾させて子供を作る】か【無理やり押さえつける】かの2択しかありません。前者は意図していない限り不幸な結末になりかねませんし、後者は猫にとって多大なストレスになります。

下手をすれば今回説明した多頭飼育崩壊の可能性も考えられます。手術自体は強制ではなく飼い主が決めることですが、推奨されているからにはそれなりの理由があります。しっかりと自分の意志で決断しましょう。

天国への扉コラム